今週のコラムバックナンバー(No.180〜171)



No.180 (2004.12.01) 『景観賞』
 平成16年度の松本市都市景観賞に「吹抜けを囲む家」が選ばれ、昨日その表彰をしていただいた。
式の後、市長さんをはじめ市役所の関係者、審査委員長、各受賞者(建築主、設計者、施工者)が
テーブルを囲んでお茶をいただきながらの懇親会が行われた。せっかくの機会だったので、「良好な景観形成
のためには、建築主と設計者両者の意識の高さとセンスの良さがないといけない。デザインについての話以前に、
少なくともドキッとするような原色であったり国籍不明の建築は改善されるのでは。我々住宅の設計者は、
本当に微力ではあるが一件一件の建築を大切に考えて綺麗な街並みを目指している。」というような、
日頃思っていることを述べさせていただいた。審査委員長からは、「設計者は今後、伝統工法にとらわれない
新しい手法による松本らしさについても提案をしてほしい。」という言葉をいただいた。
 偶然にも昨日、リビング信州(信濃毎日新聞)という住宅雑誌が発売になり、この家が掲載されている。 (林 隆)  

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No.179 (2004.11.22) 『高原の風が吹抜ける家(茅野市)竣工』
 何もなかった木々の中に姿を現わした佇まいは、周囲の風景と同化して見える。蓼科高原に建つ週末住宅の
外装は、濃いグレー色のオール板張り。少し離れた所には隣家が見えるため、その存在が気にならないような
配置計画と平面計画が基本となった。
 都会での多忙な生活から離れ、車を走らせてこの建物を目指す。そこは安らげる場でありたいし「非日常」的な
遊び心もほしい。しかし生活をするためには「日常」的な機能も必要になる。それらの接点をどこに置くかが
設計上の大切なポイントだった。
 建物の中央に位置する2層吹抜けの居間の南北面には、向い合う形で大きな開口部を設け、まさに”風が吹抜ける”
状態をイメージしている。デッキと一体化したその空間にいるだけで、四季折々の自然を感じることができるだろう。
木々の緑、青い空、澄んだ空気、季節の移ろい、暑さ寒さ、日当り、風の流れ、雪や雨、鳥の声、小動物も
いるかもしれない。時間の流れの中に身を置き、どんな暮らし方をしてくれるのだろう。Tさん、いづれお話しを
聞かせて下さい。 (林 隆)

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No.178 (2004.11.16) 『お宅訪問』
 先週の日曜日、基本設計中の長野のお施主さんの住まいへ訪問した。
趣味のサーフボードの置き場所、見せ方、飾り方など、いろいろなお話しを伺うことができた。
 設計中の打合せはほとんどの場合、私どもの事務所までお越しいただいてお願いしているが、
初期の段階で最低でも一度はご自宅まで訪問している。今現在の暮らしの中でよいこと・改善したいこと、
収納の考え方、家具の使い方など、本当に多くの情報を得ることができる。
 たまに、「狭くて散らかっているので、林さんに見られたら恥ずかしいですー。」というような話しに
なることもあるが、そんなことはないのです。ありのままの状態を見せていただきたいのです。
ぜひよろしくお願いします。 (林 隆)

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No.177 (2004.11.9) 『教会のその後』
 今春竣工した「円なる教会」の秋のお祭りが、11/7に行われ招いていただいた。
普段は個々の空間として機能している、神殿とお広前、談話室、厨房、控え室などが、この時は一体空間
として変貌する。設計段階では、この部分の動線計画の検討が最も重要な部分であった。この日のために
準備を含めて数日間は特別な空間になり、その後また静寂な日常の空間に戻る。まさにその状態を体験
させていただいたこと、そして快適に暮らしていただいていることは、私にとっても何よりも嬉しいことだった。
 その後、「円を内包する教会」(品川区)の副教会長先生から、「大崎教会ご造営物語」と題した講演を
いただいた。はじめてお伺いすることも多く、お世話になった数々の思い出と共に当時の感動が蘇るようだった。
 本当に楽しい一日をありがとうございました。 (林 隆)   

所員の独り言
 私たちの生活は、家族が増えたり好みが変わったりと、ふとしたきっかけで変わることがあります。
そうした生活の変化に対応する住まいづくりは、一番重要なキーワードであり課題でもあります。
自由に間仕切れる可変性のある空間とともに、長く住む間には設備機器の交換があったりと、
あらゆる面での想定が必要になります。
小さな要望を少しずつ暮らしながらゆっくり実現できる、住み手とともに変わり続ける家を
造ることができればと思っています。(長岡 信行)

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No.176 (2004.11.2) 『建築家協会の作品展』
 日本建築家協会・長野地域会(JIA長野県クラブ) 会員の作品展:あすなろ建築展 のご案内です。
長野県内のJIA会員による建築作品展で、年に1回行っております。今年は約20名が参加。
林も住宅2例を出展しております。ぜひご覧になって下さい。
@飯田会場
  2004年11/6(土)〜11/7(日)
  「生活と環境まつり2004」イベント会場ブース
  飯田市鼎文化センター体育館
A上田会場
  2004年11/11(木)〜11/12(金)
 上田信用金庫しんきん本店ギャラリー    
(林 隆)

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No.175 (2004.10.26) 『風の流れる家(上田市)竣工』
 シンプルな平面と片流れ屋根の箱型の外観。
規制の概念にとらわれないおおらかな暮らし方を考えた結果、家の中央に階段と薪ストーブが配置された。  
幅7280(4間)を全面開放できるオリジナル木製建具は、内外の空間をつなげる大切な役割を果たし、
内側に設けた障子を閉めればまた別の雰囲気を演出できる。 階段+吹抜けを介して1〜2階が一体化し、
南面には大きな開口部を、北面には風を通すための小さな開口部を効率的に設けてあるため、
風の道がたくさんある断面型になった。
 小さな子供さんの成長と共に、この大胆なプランの家がどのように年をとっていくのか、楽しみに
見守りたいと思う。 (林 隆)     

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No.174 (2004.10.19) 『隈研吾氏の建築』
 栃木県那須で同窓会があり、隈研吾氏設計の3つの建物を見ることができた。
馬頭町広重美術館、那須歴史探訪館、石の美術館。それぞれ杉、和紙、石という自然素材が
伝統手法にとらわれない斬新な使い方をされている。竣工後4年が過ぎているため、
雑誌に発表された写真と比べれば多少の経年変化はあるが、すごく新鮮な印象を受けた。
戸隠村の「奥社の茶屋」(そば屋さん)も、無双格子の現代版とも言える木とガラスの使い方が
すごく綺麗だが、共通する考え方やディティールを感じた。
 話しは変わって、ALFA156と別れる時がきてしまった。6年、78000Km、ずっといっしょだった愛車も
入退院の頻度が増し
日常の生活に支障をきたすようになってしまった。
プライベートな使い方だけならばずっと維持していきたかったのに、悲しい決断をせざるをえなかった。
イタリアのデザインは毎日を本当に楽しませてくれた。まだまだ現役で走ってほしい。 (林 隆)   

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No.173 (2004.10.13) 『森の小屋」(長野市)竣工』
 森の中に、かたちは小さいけれども大きく暮らせる家が竣工した。
暮らし方や家としての機能(居間食堂、台所、浴室洗面などの水周り、寝室など)について考えた結果、
個々の領域がつながってはいるけれど区分もされているという、絶妙なゾーニングになった。
必要最小限の面積を追求すること、室内に建具がなくても支障がないこと、生活の中で物があふれないように
スッキリ暮らせること、人が集い楽しめること、冬の寒さや雪をマイナス要素と考えないこと、地元の材木を使うこと、
灯油やガスを使わないで環境に配慮したいこと、などが基本設計の段階での大切なテーマだった。
 引渡しの日から太陽光発電が始まった。雪景色を背景に薪ストーブの炎を楽しめるのはもうすぐです。 
建築主のTさん、薪の準備がんばって下さいね。
 (林 隆)

所員の独り言
 先週、「森の小屋」の引渡しが行われました。この位の時期になると春着工した建物が次々と竣工します。
計画段階で完成後の建物をイメージする手段は、図面・パース・言葉や見学会など色々ありますが、
どれもお施主さんと私達がイメージを共有していく上でとても大切なものです。
これらのものを駆使して、少しでも分かりやすい、そしてイメージが広がっていくような
プレゼンテーションが出来るように考えていきたいと思います。 (村山 崇)


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No.172 (2004.09.21) 『祭日なのに・・・』
 工事現場は動いている。昨日、竣工を来月に控えている住宅の現場へ出向いたところ、多くの職人さん達が
平日と同じように仕事中だった。長野市「森の小屋」の現場には、塗装屋さん・タイル屋さん・給排水の設備屋さん。
上田市「風の流れる家」の現場は、大工さん・塗装屋さん・電気屋さん・施工会社の社長さん。ほとんどの方が、
一年を通じてお休みは日曜日だけで、土曜や祝日も仕事をしていただいているケースが非常に多い。一軒の家が
完成するまでには何人の方が工事に携わってくれるのだろうか。少しでもいい建物にしようと、いろいろな提案を
いただいたり、細部についても相談にのっていただけることは、本当にありがたいことで嬉しく思う。
 いつまでも話をしていたかったが、邪魔をしてもいけないのでほどほどにして帰ってきた。 (林 隆) 

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No.171 (2004.09.14) 『「外と向き合う家」(松本市)上棟』

 鉄骨造とRC造の混構造の住宅。敷地の周囲には建物が接近していること、そして将来も変わらない住環境を
維持していくために、壁で大きく囲まれた外部空間(テラス)を設け、周辺からの視線を気にせずに生活ができる
ことを目指した。@その外部空間、A2階に配置した居間空間、B透明ガラスで構成されたサニタリー(浴室、
洗面脱衣室、便所)、の3つの機能が三角型状につながっている。生活のいろいろな場面ごとに、楽しく気持ちよく
”外と向き合うことができる”家、構造の骨格が姿を現わした。 (林 隆)

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