今週のコラムバックナンバー(No.170〜161)


No.170 (2004.09.08) 『海野宿』
 9/4の土曜日に東御市へ行く機会があり、「海野宿」と「大田区休養村とうぶ」(伊東豊雄氏設計)を見てきた。
 海野宿は寛永2年(1625年)の北国街道の宿駅として開設され、「重要伝統的建造物群保存地区」として
その歴史の香り高い街並みが美しく残されている。あいにくの大雨の中、海野格子、出桁造り、小屋根(気抜き)、
卯建(うだつ)などの建築的特徴も見ることができた。うだつにはいくつもの種類があるが、建物の両側にある
妻壁を屋根より一段高く上げて小屋根を付け、防火壁の役割と装飾を兼ねて設けられている。うだつは富裕の家
でなければできるものではなかったため、「うだつがあがらぬ」という言葉もここから生まれた。

 大田区休養村とうぶは、自然環境と建築とのダイナミックな調和が最大の特徴。平成10年の竣工ではあるが、
その斬新さは保たれていて、すごく気持ちのいい空間だった。 (林 隆)

所員の独り言
 障子の一つの形式である雪見障子。障子の桟を上下に二分割して組み、それぞれに障子を貼ったもので
下の半分が可動式に上下する。閉めた状態の時には一枚の障子。上げるとガラスがはめられており、
座った状態で外部の様子を眺められる。障子紙を通った優しい光を取り込み、外と内を優しく繋ぐ、建具である。
また、上下という構造が、空間の豊かさや生活の楽しみを与えてくれる。(長岡 信行)


----------------------------------------------------------------------------
No.169 (2004.09.03) 『検索エンジン』
 の現状について専門家の話を聞く機会を得た。まずは自分のWebのポジションを知らなくてはならない。
キーワード検索をした場合、1〜4位(画面におさまる)が横綱大関級、5〜10位(スクロール要)が十両、
11位以下(クリック要)は入門したてのかばん持ち、100位以下は死んでいるのと同じ、というくらいの差と
位置付けられるようだ。また、検索エンジンを混乱させるスパムのことも考えなくてはならない。
 ホームページとして何を伝えたいのか、ということが何よりも重要で、小手先の技術論は一時的なものである
ようにも感じた。今までどおりストレートに表現していきたい。ただ残念なことに足りないのが国語力。 (林 隆)

----------------------------------------------------------------------------
No.168 (2004.08.24) 『信州の家具』
 「2004 森世紀工房 軽井沢展示会」に行ってきた。
森世紀工房(長野県建具共同組合開発事業部)の主催で、8/19、20の2日間行われ、今年で2回目。
信州の森を知る男たちがつくり出す家具はすごく力強く、その技と想いに圧倒された。 (林 隆)

----------------------------------------------------------------------------
No.167 (2004.08.17) 『お盆の休み』
 にこれもやろう、あれもやろうと計画はしてみたものの、なかなか思ったようにできなかった。
アテネオリンピックでの日本選手の大活躍、見ないわけにはいきません。それにしても、技と力と精神の
すさまじい集中、感動的な毎日が続きます。夜昼が逆になりそうな状況で、今日からは修正しなくては。
 8/14には、リゾート情報誌 『ほしいリゾート』(潟潟Nルート)の取材を受けた。9/30発売号の巻頭特集に
「八ヶ岳を望む家」が紹介される。別荘のある暮らしの素晴らしさを、どのように表現していただけるのか
楽しみだ。突然の取材に協力をして下さった施主のNさん、本当にありがとうございました。 (林 隆)

----------------------------------------------------------------------------
No.166 (2004.08.10) 『外壁の色』
 秋の竣工に向けて、各現場では工事が急ピッチで進んでいる。
自然の中にひっそりと建つ建物の、外壁の色決めが行われた。実際に使う予定の素材の色サンプルを
外壁面にあててじっくりと眺めて、いろいろな場面をイメージしてみる。
春の新緑、真夏の陽射しの下、秋の紅葉、極寒の雪景色。
信州の大自然の中で、季節の移ろいと共に建物がどのような表情を見せてくれるのだろうか。
飯綱高原の現場は、左官塗り壁で黒系の色。蓼科高原の現場は、板張りにグレー系の塗装。
 黒系の外壁色は、私の大好きな色でもある。 (林 隆)

----------------------------------------------------------------------------
No.165 (2004.08.03) 『最近の出来事』
1、7月22日、ホームページが記念すべき 100.000アクセスを達成した。本当に多くの方にご覧になって
いただきまして、改めまして感謝申し上げます。事務所を開設して半年後の1998年の11月に
ホープページを作った。当時はアクセスが自分だけという日が続き、当然のことながら実績はゼロ。
何を表現したらいいのか途方に暮れる毎日だった。「設計事務所とはこんなところです。」ということを
真剣に考えて書きこんでいた。
 その時以降一貫して考えてきたことは、事務所のこと、取り組んでいる仕事のこと、今自分が考えて
いること、などの情報をひたすらオープンにしていきたいということだった。今もその姿勢は全く変わらない。
よく考えてみると、ホームページの歴史が事務所の歴史そのものなのかもしれない。小さな事務所では
あるが、これからも志は大きく持ち続けていきたい。

2、今年も、リビング信州2005(信濃毎日新聞社)に掲載していただくことになり、8月1日に取材をして
いただいた。吹抜けを介して家全体がつながっているという建築空間の特徴と、子供さんを含めた
ご家族の和やかな暮らしぶりを、うまく表現していただけたらと思う。
お施主さんご家族には大変なご協力をいただきまして、本当にありがとうございました。11月発売予定。

3、先週から、建築学科の大学生・Mさんが事務所へ研修に来ている。ひとつの建築が、企画構想の段階、
基本設計、実施設計、現場監理というそれぞれ重要なプロセスを経て創られていく。複雑に1日1日が
過ぎていく実務の現場を、じっくり見て何かを感じていってほしい。 
(林 隆)

所員の独り言
 
暑い日が続く時期になりました、東京では昨年昔ながらの打ち水で気温を下げようという試みが行われ、
その結果瞬間的に気温が一度下がったという話を聞きました。
この試みは今年も行われるようで、その結果が興味深いところです。
体質的にクーラーが苦手な私は、打ち水・風鈴・すだれ等など
昔ながらのこういった方法で涼しさを演出して、今年の猛暑を乗り切っていこうと思います。  (村山 崇)


-----------------------------------------------------------------------------
NO.164 (2004.07.27)
 
『高原の風が吹抜ける家(茅野市)上棟』
 蓼科高原に建つ週末住宅。北方向と南方向には木々の緑と青い空だけが見えるという敷地の特性
を生かすため、内部と外部とのつながりをどのようにもたせるかがテーマのひとつだった。
建物中央の2層吹抜け部分の北面と南面には、向い合う形で幅5m・高さ4mの大きな開口部を設け、
まさに風が吹抜ける状態をイメージしている。
 一方、東西面は最小限の開口部だけにとどめ、大きな壁として見せている。外壁はオール板張り、
濃いグレー色のコンパクトな箱状フォルム。玄関アプローチ部分のコンクリート打放し自立壁は、
大きな自然の中から小さな玄関へと人を導き入れ、建物の中に入ると再び自然が目の前に現われて
くるという、「場の転換」を演出するための役割を果たしている。 (林 隆)

-----------------------------------------------------------------------------
NO.163 (2004.07.20) 『手づくり』
 進行中の現場では、各職種ごとに工事が進んでいるが、
それと同時に工場で作られて完成品として現場に納められるものもある。
現場によっては、照明器具、手摺、ドアの取手、表札、薪ストーブなどを手づくり作家にお願いして
製作している。また、キッチンや大型木製建具など既製品では対応できないものは、オリジナル品として
家具屋さんや建具屋さんに作っていただいている。 
 毎日取り組んでいる設計そのものが、オリジナルな空間を創ることではあるが、上記のものは
空間を構成している大切な要素として、こらからも考えていきたい。 (林 隆)


-----------------------------------------------------------------------------
NO.162 (2004.07.13) 『趣味の広がる家(三郷村)上棟』
 木造の住居部分とRC造のガレージ+趣味室、という構成の混構造。
2階に生活の中心となるLDKを配し、RC部分の上部には屋根の架かったデッキと屋上庭園を計画している。
内外の両空間は大きな開口部によってつががり、その場所からは北西方向に北アルプスの山並みを
望むことができる。南からは光や風を大きく取り込み、西は隣家と近いため屋上庭園の植栽によって
領域区分を図り、北西〜北方向は遠景を望むことができ信州の四季を感じながら暮らせることを願い、
ゾーニングが決まった。
 その2階の空間へは、玄関ホールにある「浮遊する階段」によって導かれる。
南面の大きな開口部に面するその折返し階段の踊り場は、2本の細いパイプによって吊られていて
遊び心を演出できればと思う。11月竣工予定。 (林 隆)

-----------------------------------------------------------------------------
NO.161 (2004.07.06) 『コンクリート打設』
 7月に入ったばかりなのに、信州でも本当に暑い毎日が続いていて、事務所では冷房を入れている時間帯が
長くなってきた。
 進行中の現場では、今日(趣味の広がる家)・明日(高原の風が吹抜ける家)と二日続いて
打放し部分のある建物のコンクリート打設が行われる。気温、湿度など状況に応じた配合計画のもとで、
多くの職人さんたちの手によって打ち込まれていく。型枠をはずした状態そのものが仕上げであるので、
いかに隅々まで均一に綺麗にコンクリートが流れて行くか、打設の時がまさに緊張の瞬間である。 (林 隆)

所員の独り言

 切妻造り・入母屋造り・寄棟造り・宝形造り・・・と日本建築の屋根は、いずれも
軒の出のある傾斜した面を持ち、また、技術の進歩とともに水平面を持つ陸屋根まで、
様々な形式の屋根がある。歴史的な視点から、また海外の諸建築を見ても屋根は、
単に外部に面して空間を覆う、自然から人間を守るだけの役目ばかりでなく、権威や格式を
表しているかのように見える。材料においても、例えば瓦は、素材や製法の違いにより
色や艶の出し方まで異なるように、それぞれの土地の風土や歴史を反映している。
 屋根は、構造技術や材料が著しく発達し、自由な発想が出来る現在でも文化や歴史など
多くのことを教えてくれる、建物の部位であると思う。(長岡 信行)


-----------------------------------------------------------------------------