今週のコラムバックナンバー(No.230〜221)



NO.230 (2006.1.11) 『2006年を迎えて 』 
 年末年始は、長野県の北部では大雪、なぜか松本だけはいい天気が続いた。
2006年、新しい年を迎えました。事務所を設立したのが1998年、今の事務所に移転したのが2002年。
仕事の記録として、そして作品発表の場として、ART BOX「現代日本の建築vol.2」に
掲載していただくことになった。春に刊行予定です。 
 昨年の構造計算偽造事件は大きな社会問題となり、今でも報道が続いている。
よくわかりにくいと言われる私達の職能や、建築ができていくシステムが、社会に対してもっと広く正しく
伝わってほしいと思う。そのためにも私たち建築士(建築家)は、更に責任のある確かな仕事を
していかなくてはならない。
 今年も、心のこもったもの・深い想いが込められたものを創っていきたいと思う。
どうぞよろしくお願い申し上げます。 (林 隆)

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NO.229 (2005.12.28) 『2005年、お世話になりました。 』 
○ 信州の今年の12月は、とても寒くて雪が多かった。RC壁式構造の長野の現場では、配筋や型枠工事が
雪の影響で多少遅れている。また塩尻の現場では、あまりにも気温が低いので基礎工事を春に延期した。
毎日のこの寒さの中で、工事に携わっていただいている方々には、本当に感謝を申しあげます。
○ 12/21には、何とか時間を作って「吉村順三建築展」へ行ってきた。最終日に近かったせいなのか、
開館の10時過ぎには、すでに多くの人で会場はいっぱいだった。手書きの図面や1/30の模型が展示され、
映像でも作品が紹介されていて、時間を忘れてしまうほどの内容だった。小住宅に注がれたエネルギー
の凄さは、言葉では表現できないほど感動を与えてくれる。有名な数々の言葉も大きく掲げられていた。
「建築家として、もっともうれしいときは、建築ができ、そこへ人が入って、そこでいい生活がおこなわれて
いるのを見ることである。日暮れどき、一軒の家の前を通ったとき、家の中に明るい灯がついて、
一家の楽しそうな生活が感じられるとしたら、それが建築家にとっては、もっともうれしいときでは
あるまいか」吉村順三・1965
○ 12/22には事務所のホームページが、150.000アクセスに到達した。
多くの方にご覧になっていただきまして、ありがとうございます。最近では一日に100人以上のアクセス
ということになりますが、これからも更に有意義な情報を発信していきたいと考えています。
○ 先日は、中学生の娘が英語の授業で「21世紀の偉人」について英作文をするとのことで、
TADAO ANDOについて聞かれた。全く建築には興味がないのに何のことかと思ったら、小さいころから
見学に連れまわしていたので、何となく偉い人だと思っているらしい。
花博が行なわれた淡路夢舞台や、真言宗本福寺水御堂・子供図書館などが強く印象に残っているようで、
写真の切抜きを貼っていた。
「一言でどんな建築なの?」と聞かれたので、「闘う建築だ!」と答えておいたら、「Fighting Architecture」
となっていた。そして 「おとうさんの知り合いなの?」。「YES」と言いたかったが正直に「NO」と言っておいた。
○ 早いもので、今年も一年が終わろうとしています。多くの方との素晴らしい出会いに恵まれて、
建築の設計に携わることができました。いろいろとお世話になりまして本当にありがとうございました。
スタッフの長岡・村山ともども、改めて感謝と御礼を申し上げます。
来年もぜひ、よい年でありますように。 (林 隆)  


所員の独り言
鉋(かんな)や鑿(のみ)を使う大工さん、建具屋さんの手。
ひとつの建物に携わる方々の手は、ごつごつと力強く、しっとりと柔らかい表情豊かな手をしています。
私たちを取り巻く生活は、ありとあらゆるものの工業化が進み,画一的な大量生産品に囲まれた
大変便利な環境となっています。工業製品を作るロボットも人間の手が作り、
また、多種多様な建材から雄大な空間を作り上げるのも人間の手であり、
人間の手は、重さや温度、質感などの多彩な情報を得て、巧みに操り感情や思いを形にしています。
見る聞くという感覚を使うとともに、現物を手に取ること、触れること、手を使い動かす事で
物事の本質が見えてくるのではないかと思います。(長岡信行)


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NO.228 (2005.12.21) 『「陽だまりの家(安曇野市)」竣工 』 
 第一の特徴は、敷地全体を有効に使う配置計画であること。道路に面する敷地の南側部分に
駐車スペースや玄関などを、敷地の北側部分には居住部分を配置することにより、その中間領域として
中庭空間が生まれた。駐車スペースや中庭の存在によって、居住部分は道路からの視線や音が
気にならない落着いた環境を確保することができた。中庭はデッキと植栽(予定)で構成され、
そこに面する居間食堂や回廊部分は、明るくて開放的な”陽だまり”の空間であり、気持ちがいい。
 第二の特徴は、施主さんがご自分の山から切り出した木材を随所に使ったこと。一部ではあるが
床板・壁の板材として「赤松」、天井板として「サワラ」、デッキ材として「カラマツ」、造り付家具の
棚板などに「ナラ」などを。山を維持して木を育ててこられたご家族の思いを、家づくりを通じて
継承していくことができた。 (林 隆)   


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NO.227 (2005.12.13) 『「窓辺に集う家(諏訪市)」竣工 』
 幹線道路から少し離れていて、敷地の南側には低い建物だけが存在する環境は将来的にも
維持できそうなことから、南向きに大きく開かれた建物の構成になった。敷地の特性を素直に反映
させることにより、日当りのいい”窓辺”空間が生まれ、そこで心地良く生活ができることを目指して
プランができあがった。
 2階の居間食堂、1階の玄関を兼ねた多目的なホール、そして1・2階の両空間を結ぶ開放的な
階段も、南向きの大きな開口部に面している。居間にはプロジェクター、そして太陽光発電も装備
されている。 (林 隆)

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NO.226 (2005.12.06) 『構造計算書偽造問題 』
 建築設計の仕事に25年携わってきたが、これほどの衝撃ははじめてであり、
簡単にはすまされない深刻な事態だと思う。
私の所属する(社)日本建築家協会(JIA)関東甲信越支部から声明が発表されたので転記します。
(林 隆)
  
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(以下、「構造計算書偽造問題についての声明」)
社団法人 日本建築家協会( JIA)関東甲信越支部  支部長 松原 忠策

 私達日本建築家協会の会員は、よい環境と長生きのする建築を作り、幸せな人間社会の形成を
目指して日夜研鑽してまいりました。 然るに、この度、私達と同じ建築の設計に携わる建築士による
構造計算書の偽造という我々の想像も及ばない違法行為が当該マンションの購入者等に多大な
被害を生じさせ、かつ地震災害の危険にさらして一般市民の方々に不安を与えたことは、
本協会をはじめ、建築設計に関わる者全員がその職能倫理を厳しく問われる深刻な事態であると
受け止めます。
 今回の問題については、国土交通省の調査結果と、我々関連団体の調査をもとに解決への
方策を待つものでありますが、構造設計、設備設計等の専門分野を統括・調整する立場にある
建築設計者の団体として、日本建築家協会(JIA)は、この問題により、大きく失われた建築家に
対する市民の信頼を回復すべく最大の努力をいたします。

 JIA関東甲信越支部は市民の方々に与えた不安を払拭し、地震災害の危険から回避するために、
当面次のような対応をいたします。


1、関東甲信越支部(東京都・神奈川・千葉・埼玉・茨城・山梨・群馬・栃木・長野・新潟の1都9県)の
市民の皆様がお住まいのマンションの構造等についてのご不安やご質問には、関東甲信越支部
首都圏建築相談室(*)が対応します。
*(03-3408-8291(tel) 03-3408-8294(fax)info@jia-kanto.org)

2、本協会会員の建築家に対して、改めて法令遵守と業務の厳正な執行について周知徹底を図ると
同時に、協働する構造及び設備技術者の専門性と尊厳を改めて重視し、われわれと同様法令遵守と
業務の厳正な執行について周知徹底して参ります。


 日本建築家協会は、国から与えられる特別な知識と技術を備える建築士の資格だけでなく、
その責任を負うにふさわしい倫理意識と高度の業務遂行能力を持つ建築家の団体として、
このような問題の再発を防止し、今後とも優れた社会資本としての建築物の生産に資するため、
以下のことに継続的に努力してゆきます。

  1. 日本建築家協会の「建築家憲章」はじめ「倫理規定」や「行動規範」遵守の徹底
  2. 新しい資格制度の確立を目指す、JIA登録建築家の増員
  3. 継続職能研修CPD制度による建築家の技術・能力の向上
  4. 世界規準に順ずる建築教育制度の確立
  5. 日本建築家協会(JIA)会員への勧誘

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NO.225 (2005.11.30) 『「中庭へ広がる家(松本市)」上棟 』
 好天に恵まれて、11/27(日)に上棟式が行なわれた。
敷地の全体計画の中で、建築は次の3つの機能が明快にゾーニングされて、コの字型の平面型に
なっている。
@LDKなどの居住ゾーン
A玄関、水廻り、予備室のゾーン
Bガレージ(2期工事)
その結果生まれる、三方を囲まれた中庭が特徴。
風や光を取り込み、周辺からプライバシーを守り、そして最も環境にいい方向へ視線が抜けるように、
中庭はいろいろな役割を果たしてくれる。
 地鎮祭や基礎工事の時と違って高さが認識されると、いつものように建物は大きく感じる (林 隆)

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NO.224 (2005.11.22) 『1週間の自分 』
久しぶりに1週間をふり返ってみました。
11/14(月) 朝:所内ミーティング、夕方:「陽だまりの家」現場へ(施主さんと打ち合わせ)
11/15(火) 午後:写真家のHさんと打合せ、夜:Tさんと基本設計打合せ 
11/16(水) 午後:設計相談の方と面談、夜:「凝縮した家」施主さんと着工に向けての打合せ
11/17(木) 午後:Uさんと基本設計打合せ
11/18(金) パネル製作など
11/19(土) 朝:「森の小屋」1年検査で雪の舞う飯綱高原へ、午前:「庭を内包する家」現場へ

       午後:INAXパネル展会場へ、夜:タイヤ交換         
11/20(日) 午前:Hさんと実施設計打合せ、午後:INAXパネル展会場へ、夜:Mさんと基本設計打合せ
 
11/21(月) 朝:所内ミーティング、午後:Sさんと基本設計打合せ、夕方:病院へ(健康診断の再検査)
11/22(火) 午後:「窓辺に集う家」現場へ(施主さんと打合せ)、夜:設計相談の方と面談、深夜:HPのコラム 
明日(勤労感謝の日)は、お休みをいただきます。 (林 隆)  

所員の独り言
 紅葉を見てきました。この辺では大分葉が落ちてきていますが、今回行った愛知県(香嵐渓)では、
葉が色づき始めたところで、紅と黄と緑の葉が見事な風景を創り出していました。
精神的にはとても癒された一日だったのですが、少しの山歩きでひざが笑ってしまい、
肉体的な限界を感じてしまった日でもありました。
何か少しでも運動をしなければと思わずにはいられない今日この頃です。 (村山崇)


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NO.223 (2005.11.15) 『「深い軒の家(長野市)」竣工 』

 大規模な造成地の一角に、周囲に点在するメーカーハウスとはちょっと雰囲気の違う家が竣工した。
施主さんにとっても私にとっても、はじめからちょっと違うものを創ろうとしたのではなくて、
機能性・合理性・美観などについて追及していった結果、そうなったのです。
南面への開き方や向き方、水廻りを中心としたサークル動線、吹抜けを介した1〜2階へのつながり、
吹抜けの両サイドに位置するオープンにもクローズにもなる個室、そして深い軒に覆われたデッキと
玄関ポーチ。これらの機能をコンパクトに明快に構成することができた。
玄関には、サーフボードが3台置かれる。3本のシンボルツリーはもうすぐ葉を落としてしまうが、
すごく効いている。 (林 隆)

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NO.222 (2005.11.08) 『「つながる家(小海町)」竣工 』
 空間がつながる、内と外がつながる、隣地とつながる、夢につながる、未来につながる
そして家族がつながる・・・という想いを込めて創られた。意匠と構造の両面から、シンプルな
構成の中でいかに快適で気持ちよく広々と感じられる空間を演出できるかを考えた。
約1年の設計期間と、半年の工事期間はあっという間に過ぎたように感じる。
家全体が一体空間の間取りであり、これからどんな生活がはじまるのか、またその様子も
見せてほしいと思う。
     
□ 11/3に幕張へ行ってきた。東京モーターショー。
アルファ・ブレラ、BMW・Z4クーペ、ポルシェ・ケイマンS、などすごく綺麗なデザインだった。
大きな会場、ものすごく大勢の人、そんな中で各メーカーの演出の仕方が興味深かった。
車だけで勝負しているところ、音楽による演出、女性達によるプレゼンなどなど。
家に帰って現実に戻ってみると、夢を見に行ってきたようなものでしたね。

□ 本田美奈子さん、アイドルの時から好きだったけれど、今のほうがもっと好きだった。
本当に綺麗な声の持ち主で表現力がすばらしいと思っていた。本当のプロだと思っていた。
才能を持った人がこんなに早く逝ってしまった。
(林 隆)  

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NO.221 (2005.11.01) 『KURAの取材 』
 10/28に、「地元の木でつくる家」(阿南町)の取材をしていただいた。
施主さんが自ら切り出した山の木を使ったことが、家づくり物語の柱になりそうです。
 帰りにライターのOさんと、妹島和世氏設計の小笠原資料館(飯田市)を見てきた。
竣工後8年が経過しているが、大きなガラスの壁、大きく持ち出されたピロティ−空間、
白と黒の内部空間は綺麗に維持されていた。ただ平日の来館者は少ないようで、
運営的には市の施設だから維持できているのではないかと思った。   
 10/30に事務所の新しい車がやってきた。GOLF・X(白)。今度はエンジンが静かなので、
現場での騒音にはならないと思います。 (林 隆)   

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