今週のコラム バックナンバー(No.60〜No.51)


No.60 (2002.05.27)  『設計を再開した住宅』
 約1年前から設計を中断していました、「大屋根の家」の実施設計が再開しました。
基本設計まで終了した段階で、約1年間の検討期間があったわけですが、ほぼそのままの形で
実施設計に移行できることは、嬉しいことです。
 敷地は南・東道路の角地で、大きな勾配屋根が特徴の家です。そして、屋根勾配なりに居間の
天井が変化していて2階から見下ろすことができます。今年の秋着工します。 (林 隆)

 所員の独り言
 一級建築士試験まで残すところ後2ヶ月となりました。
さすがにこの位の時期になってくると、何をやっていても
頭の片隅に試験の事が思い浮かんできて無言の
プレッシャーをかけてきます。
 このプレッシャーに負けないよう、適度な遊び心を持ちながら、
残りの日数頑張って勉強していきたいと思います。 (村山 崇)


No.59 (2002.05.20)  『住宅の着工、第1日目』

 先週は、「ながく住む家」と「御岳山を望む家」の2軒の住宅が着工しました。
1軒はクルマで15分、もう1軒は2時間半の現場です。
当日は、建築主・工事に携わっていただく施工者の方々そして設計事務所の三者で、
今後の工事の安全を祈願しました。
その後、現地で建物の輪郭をテープでわかるようにして配置を確認し、基本となる建物の
レベルを決定します。
敷地に対してどんな建物の大きさか、よくわかる瞬間です。
 いつものことですが、その日に至るまでのプロセスが思い出されて感慨深い一日であり、
そして明日からの工事のことがとても楽しみでもあります。

 この春は、年内竣工に向けて何軒かの住宅が着工します。地域性、周辺の環境、敷地形状、
建物の規模、構造など様々ですが、どの家も専門の技術をもつ多くの方々の力の結集により
造られていきます。工事に携わっていただく方々、どうぞよろしくお願い致します。 (林 隆)

 所員の独り言
 先日、農業体験施設へ行く機会がありました。そこは、農場や放牧場、
飲食施設や温泉施設等と多岐にわたる施設が広大な敷地の中に配され、
大自然とともに地場産の農産物を味わうことのできる施設でした。
 農産物や加工品のできる工程を外部から見学し、施設内には手間と時間を
かけて作製する方々が、沢山働いていました。いつでも食べ物を手にすることが
出来る便利な世の中ですが、改めて係わる人々に感謝し、食べ物の有難さを
感じました。(長岡 信行)


No.58 (2002.05.13)  『4層コートのある家』
 松本市に建設予定の 「4層コートのある家」の実施設計がほぼ終わりました。
住宅地に建つ3階建てのこの家は、屋上も含めて4層に重なり合う外部空間をもつ
コートハウスです。

 室内と、中庭や屋上とのつながり方に特徴があり、中庭を介して上下の空間が
のびやかに連続しています。
将来の
近隣の状況が予測しにくいため、1.2階に中庭を
設けることにより 敷地の「外には閉じ、内に開く」 空間構成にして、3階と屋上は
 「外に開いて」眺望を楽しむことができます。
幅4.2mを全開できる大きな開口部・
らせん階段・デッキ・屋上庭園などは、建物の内外を有機的に関連付け、楽しく
居心地のいい空間を演出するための装置です。
 各階から、光・風・雨や雪という自然を感じ取ることができ、各階に植栽をすることにより
新緑や紅葉といった季節感を味わうこともできるでしょう。
 道路側のファサードは、あえて開口部を最小限にとどめ、無機質で力強いコンクリート
打放しの壁にしました。この端正な表情は街並みの中に新たな風景を創ってくれるのでは
ないかと期待しています。 (林 隆)


 所員の独り言
 5月も半分が過ぎました。昼間の気温も上がってきて、
半袖で出かける人も多いのではないでしょうか。
この時期は多くの生命が活発に活動を始める時期です。
人間は一年中快適に過ごせるようになってきたためその辺を
自覚することが少なくなってしまっているのではないでしょうか。
 木々の緑が太陽の光を受けて眩しいくらいに輝いているように、
私も生命感溢れる日々を送りたいものです。 (村山 崇)


No.57 (2002.05.07)  『住宅のコスト』
 
大型連休は天候に恵まれましたが、今松本では久しぶりに雨が降っています。
新緑が美しく、一年の中で一番好きな季節です。
 連休中には、5月着工予定の住宅のお二人のお施主さんと、最終金額決定の
打合せをさせていただきました。明日も一件その打合せ予定です。
 通常基本設計の段階で、規模・仕様・性能・設備などを考慮して概算目標金額を決め、
その後、詳細設計に入っていきます。設計者としましては段階が進むにつれ、
ついもっともっといい空間を!ということを考え、いろいろな提案をしたくなってしまい、
そのためにはコストも少しづつかかる方向に変わっていきます。 ご予算を忘れて
いるわけでは決してないのですが、どんどん夢が膨らんでいってしまうのです。
 その結果、建設会社から提示された見積書は、ほとんどの場合、多少(?)
予算オーバーになり、設計内容の見なおしが必要になります。一度決めた設計内容の
仕様変更を考えることは辛いものがありますが、お施主さんも前向きにいっしょに
考えて下さいまして、何とかご予算に近づけることができそうです。
 住宅のコストを考える場合、何千万円という大きな金額の中で、どこにウエイトを置いて、
どこで少し力を抜くかというようなメリハリも必要で、全体のバランスが大事です。
規模や金額ではなく、そのバランスの良さが”気持ちのいい空間”につながり、豊かな
気持ちになれる家なのではないかと思います。
 今週は、なかなか一発で予算に合わない設計をしている言い訳でした。(林 隆)

 所員の独り言
 澄み渡った青空と、緑芽吹く木々との朝の風景が爽やかな時期になりました。
その風景の中にスーッと横切るツバメがいました。
この時期、水の張った田圃からせっせと軒下に土を運び
巣造りをするツバメの姿があります。くちばし程度の小さく丸めた土を積み重ね
半逆円錐状の巣を眺めていると、とても感心します。ある程度湿度を保ち、保温性
のある土壁造の巣は、さぞかし過し易いかと思います。多様な建材のある
建築業界ですが、土壁造再考と思うひと時でした。 (長岡 信行)


No.56 (2002.04.22)  『ある土蔵の使い方』
 あるお宅の敷地の一角に大正時代に建てた土蔵があります。
外壁も屋根も当時のままでかなり傷んでいますが、中に入ると柱や梁はしっかり
しています。今のままではどんどん古くなり心配ですし、部分的に手直しをしても
結構費用がかかります。
 素朴な発想として、ある段階で内外全体的に手直しをして、今後何十年も
耐えられる造りにしたらどうか、更に土蔵(収納)としての用途でなく他の有効な
使い方がないものか、その場合、かけた費用に対する効果は大きく、などなど
いろいろ考えています。 (林 隆) 

 所員の独り言
 特にこれといった予定の入っていない休日の昼間、
何をするでもなく、自分の部屋の椅子に座って
ぼーっと雨の音を聴きながら考え事をしていました。
 特に何を考えるでもなく、何を考えればいいのか考えているような状態でした。
そんな状態がしばらく続いた後、なんだか無性に何かに一生懸命打込みたいと思い、
気づくと油絵描いてました。
 そんな一日を過ごして思ったことは、
ひまするというのは、充電期間なんじゃないかということです。
ひますることに飽きたとき、結構やる気に満ちてるものです。 (村山 崇)



No.55 (2002.04.15)  『二棟を行き交う家』
 岡谷市に計画していました「二棟を行き交う家」の設計が、ちょうど半年の設計期間を
経て終了しました。住宅密集地であること、敷地に段差があること、敷地の二方向に
道路が接していること、などが立地の特徴です。
二世帯住宅であるこの家は、住まい方を考える上で「共有」や「接点」というキーワード
が議論され、独立性と共同性がそのまま建築の組み立てに反映されました。家族が
両世帯の領域を気軽に「行き交う」ことのできる動線計画とし、それぞれの世帯の時間が
ひとつの建物の中で同時進行し、新たな家の歴史がつくられていくことになります。
 先週は、「円を内包する教会」の1年検査をさせていただきました。品川区にあるこの教会が
完成して、ちょうど1年が過ぎました。1年ぶりにお邪魔したのですが、建物がすごくきれいに
磨かれていたこと、樹木が育ち街並みに潤いを与えていたこと、そして何より設計段階で
イメージしていた通りの使い方をしていただいていたことは、設計者としてはすごく嬉しく
思いました。不特定多数の人がお使いになるこの建物も、設計段階での充分な検討を
させていただいたからこそ、うまく機能しているのではないかと、深夜まで続いた反省会(?)
で話題になりました。大変お世話になりました。
 信州の情報誌 「KURA」 (5月号、780円)に、「こだわりの住宅」として「北アルプスを望む家」
が紹介されました。本日発売ですので覗いてみて下さい。 (林 隆)

 所員の独り言
 先日、蔵に眠っていた箱階段を改修し直したとの話を聞き、見学をしてきました。
塗装と立付をし直し、箱階段は飴色に輝いていました。
小さな小引き出しがあったり、踏面が開きになっていて上部から収納したりできる
箱階段。収納と上下階を繋ぐ空間装置でもあり、気軽に移動もできます。
沢山のモノを使いこなし生活している現在ですが、収納することの生活の知恵と
遊び心を学んだような、ひと時でした。 (長岡 信行)


No.54 (2002.04.08)  『ながく住む家』
 塩尻市に建設予定の「ながく住む家」の設計がほぼ終了しました。
平面形が東西に”細長い”ことと、時間的にも”長い間”住めることをテーマとして
考え、計画しました。
 南側隣地には家が建っているため、建物の南北の巾を思いきって小さくして
細長い平面形にすることにより、南側の空地をできるだけ広く確保しました。
総2階の切妻屋根でシンプルな形態が、この建物の大きな特徴です。
西方向には松本平の景色を望むことができるため、2階の西側に居間を配置して
大きな窓とバルコニーを設けました。
 また、2階はLDKですが間仕切りのドアが1台もないワンルーム、1階は個室と
水廻り(洗面・浴室・便所)ですが、個室と廊下・階段部分との境界には一切壁がなく
全面障子です。障子を開けると1階もワンルーム感覚で使えることができ、障子を
閉めると視線は遮りますが音や光は透過するというイメージの個室です。
家全体を細かく仕切るのではなく、各スペースが家族構成や時間の変化と共に
フレキシブルな使い方ができるように想定してあります。
 これは、家族にとって”長く住める”ための工夫です。 (林 隆)

 所員の独り言
 先週花見に行きました。
風は強かったのですが桜は満開で、
山がピンク色の雲のよう見えてしまうほどでした。
 しかし、実際に花見が始まってみると花を見るのは
トイレに行く途中だけというような有様です。
まあそれでもいいとも思いますが、「花見」という名目で来た以上
もう少し花に目を向けるべきだったとも思います。
 今、自分がしていることの意味を、
もう少し考えながら行動しようと思った一日でした。 (村山 崇)


No.53 (2002.04.01)  『新年度を迎えて』
 林建築設計室は本日4月1日から5年目になり、林・長岡・村山の3人体制で、
新年度を迎えることができました。
おかげさまで現在、基本設計/実施設計/現場監理のそれぞれの段階で、何人かの
お施主さんにお世話になっています。これからも引き続きよろしくお願い申し上げます。
 今年度の大きな目標としまして、事務所の移転を計画しています。現在の事務所が手狭
になり物置のような部屋で打合せをしていただいたり、駐車場のことでもご迷惑をおかけ
していまして大変申し訳ございません。具体的な計画は全くこれからですが、方向性が
決まりましたらHPでもご案内していきたいと考えています。
 昨日は「デッキを取り込む家」の地鎮祭が行われまして、今月から工事が始まります。
そして、「みどり湖の家」(塩尻市・みどり湖団地)の設計が終了しました。
敷地の明快なゾーニングにより、建物・3台分の駐車スペース・南側の庭 をやわらかく
関連付けてあります。居間〜畳コーナー〜土間(物干し)、居間の吹抜け、2階ワークスペース、
ロフト、引込み障子 などが特徴。 外観は、しっくい壁の白色と腰壁板張りの黒塗装の
シャープな対比を表現し、雑然としがちな新しい住宅地に、落着いた白黒モノトーンの表情
を創ることができました。 (林 隆)

 所員の独り言
 新年度になりますと、思い直す言葉があります。「温故知新」。私の好きな言葉です。
 昨今の世の中は、何かと目まぐるしく変化し続け、様々な情報が飛び交っていると感じます。
その様な中、情報を分析し何が必要かを見極める力が大切ではないかと常々思います。
過去の恩人の文化や文明を見直しつつ新たなる模索をし、地に足をつけ一歩づつ前に
進み続けたいです。 (長岡 信行)

 新年度になり、新たな決意を胸に抱く時期になりました。
大学を卒業して3年目に突入したわけですが、今自分に足りないことは
「大いに悩み、大いに考え、そこから大いに学び取る」という段階がきちんと踏めていない
ことだと思うので、そこをふまえたうえで今年1年を過ごしていきたいです。 (村山 崇)


No.52 (2002.03.25)  『御岳山を望む家 』
 
岐阜県・鈴蘭高原に建設予定の「御岳山を望む家」の設計がほぼ終了しました。
去年の3月にはじめて敷地を拝見した時は大雪でしたが、ちょうど1年が過ぎました。
御岳山を木曽谷の反対側から望むことができ、夏は高原でテニス、冬はスキーを
楽しめる場所です。
 敷地が傾斜しているため、鉄骨造の架台を組みその上に木造2階建・切り妻屋根の
建物が乗ります。南側の御岳山の見える方向に居間と温泉利用の浴室を配置。
居間上部の吹抜けに面して屋根勾配なりのロフト空間があり、そこは来客宿泊用の
オープンスペース。
 「温泉、薪ストーブ、掘りこたつ、吹抜け、デッキ、ロフト空間、眺望」がキーワードで、
ワンフロアーでゆったりと非日常を楽しむこの家は、秋に竣工します。 (林 隆) 

所員の独り言
 最近、遅くまで営業しているスーパーを目にするようになりました。
中を覗いて買い物をすると、昼間とは若干品数が減っているかのように見えるものの
棚にはズラリと品が並んでいました。便利な世の中だとつくづく思いました。
 又、こうやって文章をキーボードで叩き、辞書を引かずして沢山の漢字が出てくる
環境も便利だなとも思います。生活が便利や自由になったりする反面、
モノの本質や意味が次第に薄れていくのでは、とも思います。
 漢字や言葉のひとつにとってもじっくり考えていきたいものです。(長岡 信行)


No.51 (2002.03.19)  『飽きない空間 』
 久しぶりにクルマのお話を。
中古で購入した愛車ALFA156がはじめての車検を迎えました。
事務所のIT化を目指す者としては、”インターネットショッピングくらいできなければ”
ということで、ヤフーオークションで知り合った方から譲ってもらいました。
3年で走行はちょうど5万キロ、仕事でも使っていますのでこんなものかと思いますが、
なぜか不思議なくらいノントラブル。
 私が大好きな部分は、デザインがすごくシンプルなこと。そして、そのデザインの為に
ここまでやるか、というような思いきり・潔さが感じられることです。 
そのために装飾はかなり省かれています。カップホルダーなし、ミラーは手動可倒、
窓ガラスの縁に納められたリアドアの取手、1DINしかないオーディオスペースなど、
決して快適ではありません。更にマニュアルトランスミッション、よくやる移動しながらの
昼食は最悪です。しかし、ぜんぜん飽きないのです。こんなに飽きないことははじめてです。
 建築のデザインにも通じる部分があるかもしれません。シンプルで、機能的で、美しく、
飽きない空間。”飽きない”ということはどういうことか、最近よく考えます。 (林 隆)

所員の独り言
 遂にやってきましたこの季節。
外に出ると途端に目と鼻がうずきだします。
そうと分かっていても、ついつい春の気配に誘われて、
マスクもせずに外へ出て、花粉の餌食になっています。
 まあこれも木々の新しい息吹からの試練だと思えば耐えられる、
などと思いながら鼻紙片手に日々を過ごしています。 (村山 崇)


●前のページにもどる