わずかな距離と時間の魅力【玄関編】 2-11
林隆のコラム
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住宅や別荘の玄関。そのあり方としては、道路から玄関ドアへ至るまでの屋外の設(しつら)えと、ドアを開けて室内に入ってからの設えの両面がありますが、ここでは「玄関へ至るまでの屋外の設え」について考えてみます。
外と内をつなぐ中間領域として魅力ある場をつくる
設計の初期の段階では、敷地全体を見渡して、建物・庭・駐車スペースのゾーニングを検討しますが、玄関へ至るまでの経路を合理的に確保することがとても重要です。
そのつくり方は、敷地の広さや周辺環境(住宅密集地、田園地帯、森の中・・)などの条件によって異なってきますが、外と内をつなぐ中間領域として魅力ある場でありたいものです。
「長いアプローチ」と「深い軒下空間」
条件が許す範囲の中で、できるだけ「長いアプローチ」と「深い軒下空間」をつくれるように意識しています。
日々の暮らしの中で、外出をする、家に帰る、来客さまをお招きする。路地のような場所を数メートル歩き立ち止まる。そのわずかな距離と時間があることによって、より豊かな気持ちになれるものと考えています。
また、道路と玄関ドアが真正面に向き合わない関係には趣があります。それがプラン的に難しい場合でも、植栽や目隠しの塀などの対応をすることで効果的な演出もできます。
建物とその他の機能(外物置・ガレージ・自転車置場など)を統一的な意匠にする
前庭や門扉の有無によってもデザインの可能性は広がってきます。通勤にクルマを使う場合は、雨や雪の日のことを考えると、玄関と駐車スペースの関係性も大切な要素です。玄関の脇には自転車置場や外物置があると便利です。また建築と一体になった門扉(開放時には壁に納まる)をつくり、その内側に玄関戸があるというプランは、防犯的にも有効で魅力的です。
デザイン的には、建物とその他の機能(外物置・ガレージ・自転車置場など)を統一的な意匠にできれば理想的です。電気やガスの検針メーター、そしてオイルタンクなどの設備関係をうまく隠せると景観的にも綺麗です。工夫とアイディア次第で、費用をできるだけおさえながら、豊かで上質な暮らしを実現できるものと考えています。
住宅や別荘の設計の段階で、建物の内部だけでなく外部も同時に考えていくことをお薦めします。様々なデザインの玄関前の設えについて、設計実例をご紹介していますのでどうぞご覧ください。
林建築設計室・林 隆