家は南に向かなくてもいい【仕事術】1-1
林隆のコラム
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建築の計画をする敷地をはじめて見る時は、ワクワクするものです。
新築住宅の予定地は、南側に隣家の大きな壁が迫っている変形敷地でした。そして、クライアントからの要望は「昼間カーテンを使わなくても周辺からの視線が気にならない暮らしをしたい。そして明るく快適な空間がほしい。」というものでした。
さて、どんな解決策があるのか、敷地全体の使い方を考えることから設計がはじまりました。
家は南に向かなくてもいい。プライバシーを守るために北に開く。
一般的には、建物を敷地の北寄りに、庭を南寄りに配置して、南向きの日当たりのいい場所に居間を設けるケースが多いのですが、今回の場合は、南の隣家が日差しを遮りお互いの視線も気になります。そこで思い切って「北と南を逆転する手法」をとりました。
建物を敷地の南に寄せて居間の大きな窓は北を向き、その先に中庭があり、わずかな緑は南からの光を受けます。その中庭へは時間帯によって違う角度から日が差し、光は白い壁に反射しながら室内へと巡ってきます。また要所には天窓を設けて日当たりも確保しました。
日当たりの確保は南方向からになりますが、明るさの確保はどの方向からも可能です。
敷地の特性を活かすために検討を重ね、最良の答えを導き出す。そのプロセスがとても大切であると考えます。
そのプロセスの中に、豊かな暮らし・上質な暮らしのヒントがあります。
林建築設計室・林 隆